『トランスフォーマー ゴースト・オブ・イエスタデイ』 アラン・ディーン・フォスター

TF小説の感想です。実はもうかなり前に読み終わってたのですが、サイトの「名言集」作ったり、いつものズボラ癖のせいで、映画公開前ギリギリになってしまいました…(苦笑)。一応「ネタバレ全開」なので、読んでない人はご注意を!


<ストーリー>1969年、アポロ11号打ち上げの裏で、密かにもう一つの宇宙船が飛び立っていた。19世紀末北極で発見された巨大な機械生命体、通称<アイスマン>の調査研究をもとに建造されたゴースト1号である。だがそのテスト中、新型エンジンが暴走し、気がつくと彼らはどことも知れぬ銀河のただなかに…。そこでは敵対する二つのトランスフォーマー・サイバトロンとデストロンの壮絶なる戦いが繰り広げられていた!TF達の求めるものは、彼らの生命の源<オールスパーク>。終わりのない争いの続く彼らの故郷セイバートロン星から、オールスパークは遥か昔、宇宙に飛び出していってしまったのだ。一方地球では、アイスマン輸送計画が進められていた。動かすことのできない超自然的な物体<キューブ>と同じ施設で、科学者達はアイスマンを調べたがったためである。しかし、その輸送途中事故が発生。アイスマン=破壊大帝メガトロンが目覚めてしまう!果たして、ゴースト1号のクルー達と地球人類の運命は?!


読了した感想を一言で言えば、「面白かった!」です。TF達もアニメ同様、個性的で魅力的だし、ストーリーも、アポロ計画の陰で密かに行われていたもう一つの宇宙探査計画って感じで面白いし。TFは小説でも面白いことが証明されたって感じですね(笑)。やっぱ映画観た後、ノベライズの方も読もうかな。


今回のマイスターは、G1の彼とは違い、一人称は「おれ」で、副官でもないようです。今回の副官はアイアンハイドかラチェットってとこでしょうか?「おれこそは慎重さの王さまですよ」には笑いましたが、この台詞のようにマイスターは、口の減らない若きサイバトロンで、衝動性と才能をあわせ持っています。比較的小型で敏捷なため、戦闘ではそのすばしっこさを活かしていました。「いつの日か、彼ならりっぱな指揮官になれるだろう」とコンボイは考えていたようです。何となく、『BW』のチーターの少年を思い起こしました。他のキャラは、割合G1の同名に似てるような。


そういえば、マイスターって海外では「副官」ではないらしいんですよね。でも、アニメの『1st』第1話でサイバトロン達に号令をかけ、「サイバトロン戦士、ではエンジン・スタート!」と指令し、「準備完了です」とコンボイに言うマイスターはめちゃくちゃ副官っぽいですが(笑)。彼は元々副官ではないと聞いていたので、最初観た時「ちゃんと副官してるじゃん」と思いました。


今回の映画は、G1のリメイク的要素が強いですが、基本的にはあくまでG1とかのパラレルワールドなんですよね。なので、同名キャラがG1と同じ性格じゃなくても問題なし。もちろん、同じような性格だったら嬉しいですが。G1のリメイク的な意味では、マイ伝とかも同じだったんですよね。あの作品は、コンボイなどG1でもお馴染みのキャラが出てましたが、スタスクとか、G1とは全く異なる性格でしたし(笑)。この実写映画の作品世界も、無限に存在する時間線の一つってことなんでしょうね。


本作ではメガトロンが不在なため、スタースクリームデストロンの(一応の)リーダーとして大活躍しています。とはいえ、仲間達はスタスクを指導者として完全に認めているわけではなく、彼らは未だに行方不明のメガトロンを探し出そうと必死になっています。そんなわけで、スタスクの苦労は尽きないわけです(笑)。キャラ的には、かなりG1の彼に近いかも。「教訓」は『BW』のスタスクを彷彿とさせてニヤリとしてしまいました。電車の中で読んでたので結構大変だったです(苦笑)


デストロンの指導者を「首領」と表記しているのも珍しいですね。アニメなどでは「オレがデストロンのニューリーダーだ!」という台詞でもご存知の通り、「リーダー」という言葉が使われてましたが。なお、この小説でも「破壊大帝」は、デストロンの指導者の「称号」として使用されています。


アニメでは、ネメシスはデストロンの歴史上「最強の戦艦」となってましたが、今回のネメシスは元々戦艦ではなく輸送船となってます。なので、『BW』などとは異なり、それほど脅威的な存在としては描かれてません。単なるデストロンの宇宙船って感じで。あと、アニメでは彼らの戦いは「数百万年〜数千万年」でしたが、今回のはたった「数千年」と非常に短いです。もちろん人間にとっては長いですが(笑)


TFももちろんですが、人間達もかなり良い感じに活躍しています。ゴースト1号のクルー達とスタスクのファースト・コンタクトとか面白いし、彼らとコンボイの異種族間交流とか結構感動できる部分もあります。メガトロンを再び封印するため、キニア大佐がとった行動とか、騙された借りを返すため、スタスクと対決するゴースト1号のクルー達とか、壮絶です!


前回、トランスフォームは変身じゃなくて変形の方がしっくりくるよ、と書きましたが、この小説では、「変形(トランスフォーム)」となってました。個人的に嬉しかったり(笑)。TFは当初、「変身戦隊」というダサダサなタイトルになりそうだったらしいですが、もしそうなってたら多分私はファンになってなかったと思う(苦笑)。日本語版『BW』の、TFが変形する際の「変身!」にも未だに抵抗があるので(「マキシマイズ」と「テラライズ」の方が百倍カッコイイと思うけどなぁ)。


「彼らは彗星状の祖型に変形し」という文章が出てくるのですが、「祖型」ってプロトフォームのこと…?まぁ、プロトフォームは本来「TF(マキシマルとプレダコン)の誕生前の姿」なので、プロトフォームと言われても個人的に納得しづらかったですが。「彗星状の形態」じゃだめだったのでしょうか?


個人的に惜しいと思ったのが、340ページのスタスクの「デストロン軍、攻撃せよ!」という台詞。「デストロン軍団、アターック!」だったらニヤリって感じだったんですけどね(苦笑)。あと、「視覚感知器」に「オプティック・センサー」とルビがふってあったらなぁ…。オプティック・センサーとはいわゆる「眼」のことで、『ザ・ムービー』で武勇伝を語るチャーが「その星はなんとも土埃がひどくての、オプティック・センサーのワイパーを動かしっぱなしじゃったよ」と言ってます。海外版『BW』などでも使われているらしく、海外では「G1時代からの伝統的な表現」らしいです。


巻末の「<トランスフォーマー>世界完全解読」も興味深かったです。まぁ、情報としてはファンにはお馴染みのことがほとんどなんですが、G1とG2をひっくるめて「クラシック」と呼ぶ、というのは初めて聞きました(クラシックというトイのシリーズがあるのは知ってましたが…。同じ名前なのはちょっと紛らわしいのでは?・汗)。


『BW』の日本語版を「ものすごく変わってる」と書いてるのには、個人的に苦笑です。やっぱそういう感想なんだと思って。『BW‖』と『BWN』に関して、「『BW』のオープニングと同じ時代の出来事」と書かれてますが、これはちょっと間違いではないでしょうか。『BW‖』の物語は現代から「数万年後(劇中の台詞から)」の話で、舞台は「遠未来の地球=惑星ガイア」です。『BW』は「約300年後」の話なので、同じ時代ではないと思います。『BWN』では、『BW‖』の時代をガルバトロンユニクロン)が「遥か昔」って言ってたので、『BWN』は、『BW‖』からさらに数千年〜数万年後の物語と考えられます(最近観たので・笑)。


あと、ヘッドマスターの"マキシマス"ではなく、フォートレスでは?バイナルテックやキスぷれの時間線上での位置づけに関して、「正直なんだかもうよくわからない」というのには同感です(苦笑)。メガトロンを名乗ってるキャラは、マスターメガトロンが忘れられてる?と思いました(海外ではマイ伝のと同一人物らしいけど、日本では違うので)。映画は、海外ではかなりヒットしてるらしいので、次回作はすでに内定だとか。私もユニクロンは登場するんだろうなぁと思ってました。実写映画であの惑星サイズのTFがどうなるか…。文字通り想像を絶するものになりそう(笑)


最後に、この小説で個人的に気になった点をまとめてみると、前回も書いた通り、キャラの名前の所に「英語名は〜」と付いている点、"欺瞞の民"に「デセプティコン」、"最上者"に「プライム」とルビがふられている点。あと、アークとネメシスに「号」が付けられているこの3点ですね。キャラの名前やルビに関しては、巻末に解説として載せるとかすれば良かったのではないでしょうか?あと、"欺瞞の民"のルビや<トランスフォーマー>世界完全解読の所などで、ディセプティコンが「デセプティコン」になってるのはやっぱ誤植なのかな(最初の「ィ」が抜けてます)。こういったことはTFに限ったことじゃないですが…(汗)


それにしても、映画、もう明日公開なんですよね。私はもしかしたら初日に観ることができるかもしれないです。実写映画が作られるという噂はマイ伝がやってる頃(それ以前かも)から聞いてたので、個人的には待ちに待ったって感じですね…。かなり期待できそうなので、もうファンとしては楽しむだけです!(笑)



トランスフォーマー ゴースト・オブ・イエスタデイ

アラン・ディーン・フォスター

金子司訳

早川書房 2007/07